モンハンと勉強
ハンターの朝は早い
7:00に起きてすぐに、
スマホの画面を確認する。
ランニングをするための準備をしながら、
どのコースを辿れば効率良く、
モンスターを狩れるか、
頭の中でシュミュレーションする。
7:30~8:00までが朝狩りの時間だ。
どの素材がどれだけ必要で、
そのためにはどのモンスターを狩ればいいかは、
前日に頭に叩き込んでいる。
目的のモンスターを見つけると、
その場所を頭に入れて、
そこまで走って向かう。
辿り着く頃には、息が切れている。
一呼吸おいて、モンスターの討伐を行う。
強くなり過ぎた・・・
一瞬で終わる・・・
しかし目的の素材は落ちない。
次の獲物を目指して、足を進める。
家に戻ったときには、8:15だった。
予定時刻よりも15分もオーバーしている。
今日の朝も何も収穫はない。
急いでシャワーを浴びて、朝食を取り、身支度を整える。
職場に向かう。
移動は貴重な狩りの時間だ。
今日は歩いて向かうことにする。
朝に獲得出来なかった素材を、
目指して動線上のモンスターを狩る。
やっと素材が落ちた。
あとは同じものを3個手に入れる必要がある。
気が遠くなりそうだ。
いつもなら20分で着く道のりが、
30分以上かかってしまった・・・
どうやら寄り道をし過ぎたようだ。
道中、近くのモンスターは狩り尽くしてしまったのですることがない。
仕方がないので、
10:00~12:00まで事務仕事をする。
12:00だ。
3時間ごとに行われるモンスターの更新時間だ。
塾の周りがモンスターで溢れている。
狩らなきゃ・・・
お昼を買いに行くという名目で、
コンビニまでの動線上のモンスターを狩る。
目的のモンスターはいない。
12:30には昼食も狩りも終わる。
することがない。
ピアノの練習を1時間ばかりする。
14:00だ。
モンスターの更新まであと1時間。
既卒生の授業を2コマ行う。
17:15だ。
あと45分経過してしまうと、
新しいモンスターに更新されてしまう。
近くにいるお目当てのモンスターに目ぼしをつけ、
気分転換の散歩と称して、歩いてそこに向かう。
素材は落ちない。
17:45だ。
高校生の授業が始まる。
スマホの充電時間だ。
一日に2~3回は充電が必要だ。
授業が19:45分に終わる。
スマホを確認する。
近くに最も狩りたいモンスターがいる。
しかしそこに向かっていては、
次の授業に間に合わない。
長い葛藤のあとに、
泣く泣く次の授業の準備をする。
20:00だ。
本来2時間の授業で伝えるべき内容を、
1時間で伝え終わったら、
残りの1時間は何をしていてもいいのでは?
と思う。しかし、多くの方々はそうは思わないらしい。
きっちり2時間の授業を終える。
自由だ。
近くに目的のモンスターがいることを願って、
恐る恐るスマホを起動させる。
誰もいない。
何もない。
帰り道、
かじかむ手を震わせながら、
スマホのタップを続ける。
「冬はどうしよう・・・」
と、不安に思いながら。
23:00家に到着する。
今日も収穫はわずかだった。
お風呂の準備をしながら、
簡単な軽食を取る。
食べ終わった後の感想は、
「あぁ、腹減ったなぁ」だ。
今日の疲れを癒すために、熱い湯船につかる。
動くことの出来ないお風呂でモンスターは狩れない。
だが情報を手に入れることは出来る。
「モンハン 攻略」で検索する。
東京のハンターの情報が出てくる。
秋田では「近くのハンターは0人です」
と表示されるにもかかわらず、
東京では「近くにハンターが20人います」
と表示される。
みんなで楽しく狩りをしているのだろう。
僕のレベルが48のときに、
東京ではレベル100越えの、
4人パーティーがいるらしかった。
モンハンは僕のような無課金にも、
優しい仕様になっている。
課金をすればレベルが劇的に早くなるわけではない。
このタイミングでレベル100になるためには、
どうすればいいかを簡単に計算してみる。
1か月にわたり、
1日12~16時間程度、
モンスターを狩り続ければ、
そこまでは行く計算だ。
1人では無理だ。
おそらく一つのアカウントを、
複数人で運用しているのだろう。
メインのハンターがいて、
自分が狩りにいけないときのために、
別のハンターを雇っているのだと思う。
どんなに頑張っても、彼らに追い付くことは出来ない。
どんなに声を上げても、一緒に狩りをすることは出来ない。
じゃあ、辞めるのか。
じゃあ、無駄なのか。
そんなことはない。
今、僕は与えられた環境で最善を尽くしている。
それでいいではないか。
環境が理想通りでなくても、
お金で手に入れることが出来ない状況でも、
その時々で、自らの最善を只々黙って遂行している。
それでいいではないか。
そうすることしか出来ないのだから。
「やってて楽しいですか?」と言われる。
「楽しいわけないでしょう」と答える。
モンスターを狩って狩って、
素材を集めて集めて、
そうしたらあるとき突然、
急に強くなるときがある。
これまで出来なかったことが、
出来るようになるタイミングがある。
そのときだけは、ちょっとだけ楽しいかもしれない。
でもすぐに壁にぶち当たる。
また倒せないモンスターが現れる。
そのモンスターを倒すために、
試行錯誤する。
時間は限られている。
課金するお金もない。
でも毎日、毎日地道にコツコツ、
狩って狩って集めて集めて、
こんな生活が楽しいわけがない。
「じゃあ、なんでやっているの?」と聞かれる。
「自分の意思で始めたことだから」と答える。
そう、自分の意思で、「モンハンやろう」と思ったのだ。
いつ辞めたって良い。
辛かったら辞めたら良い。
時間の無駄だと思ったら辞めたら良い。
モンハンをいくら出来るようになっても、
誰も褒めてくれないし誰も幸せにならない。
でも今日も僕はログインする。
モンスターを狩る。
素材を集める。
だってまだ納得してないから。
まだ出来ることはあるから。
日本で一番なんてあまりにも遠くて辿り着かないけど、
秋田で十番くらいにならなれるかもしれないから。
レベル100まではやってみよう。
辿り着いたら見えてくる景色があるかもしれない。
現在、モンハンレベル67